蒼雪庵

いまだに推敲中

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・147

「……さっき、そこから入ってきただろう? ほら、その右手の」
「そうかしら? この戦いで、私達、結構動きまわってたわよ。位置がずれたかも……」
「まさか……」
 ロランは、もと来た方だと思われる出入り口を見た。まあまあ、とランドがなだめる。
「あまり深く考えたらいけないよ。とりあえず、ロランの言う方へ戻ってみないかい?」
「あ、ああ」
 確か、この石室を出て左に曲がれば、最初の広間に出るはずだ。そう思いながらロランは角を曲がった。
「――同じ……」
 ロランの背に初めて悪寒が走った。果てしなく同じ通路が続いている。
「罠だわ」
 両手にいかずちの杖を握りしめて、ルナが眉をひそめた。
無限回廊よ。正しい順番で通らないと、私達ずっとここから出られない。そういう魔法がかけられてるんだわ」
「正しい順番か……でも、どうやってそれを探せばいいんだ?」
 ロランは左右を見回したが、どこにも変化はなかった。同じような通路と分岐だから格子状の広間かと想像したが、これは終わりのない十字路なのだ。
「まずは最初の地点に戻るところからだね」
 早くから回廊の罠に気づいていたランドが言った。
「いざとなったらリレミトで外に出ちゃえばいいよ。ともかくは、さっき来た階段まで戻ろう」
「道、わかるの?」
「まあ、まっすぐ行けば環(わ)の地点に戻れるんじゃない? 構造が単純なだけに深みにはまりやすいけど、案外簡単に抜けられる所だと思うよ」
 こういう時のランドは頼もしい。少し元気が出て、ロランは回廊をまっすぐ進むことにした。脇に見える部屋は無視する。すると、いくつもの交差点を過ぎた先に、1階から来た広間にたどり着くことができた。
「ランド、偉い!」
 思わずルナが手を叩いて喜ぶ。まだまだ、とランドは笑った。そして、肩から下げた鞄から、帳面とペンを取り出す。
「なんだ、それ?」
 ロランがいぶかしむと、「秘密兵器だよ」とランドは地面に這いつくばり、ペンでまっすぐ2本の線を引いた。続いて、平行線へ均等に縦の短い線を5本ほど引く。平行線の右端には、四角形を二つ描いた。
「わかった、図面か」
「その通り」
 ロランも膝をついて、ランドが描いた簡単な図をのぞきこんだ。ルナが魔法の明かりをともしたいかずちの杖を近づけると、さらにくっきりと図が浮かび上がる。
「こういうのはね、勘に頼ってたら絶対に抜けられないんだ。合理的に、客観的に見るためには、紙に書くことが大事なのさ」
 そして、平行線の右端にある四角の片側に、自分達の居場所である黒い丸印を付けた。
「ここが今ぼく達がいる所。ここが、さっき戦った場所」
 ランドは平行線の上段の交差点を指さした。そこから、つと左側に指をずらす。
「戦いながら、このマス目にずれてたらしい。ここから今度は下の部屋に入って……」
 交差点は石室も意味する。ランドは指を平行線の下段に滑らせた。
「さあ、ここはどこだろうってことになり、道に迷った。で、ロランは左側をずっと進んで……」
 ランドは指をまっすぐ左へ運んだ。線の終わり際で指を離すと、黒丸印の地点を示す。
「平行線の両端は環になってる?」
 唇に軽く拳を当て、ロランは言った。ランドはうなずいた。
「そう。だから、最初にぼくらが上ってきた階段のある広間は、この隣なわけだね」
「なるほど……。それに、つながっているのは左右だけじゃなく上下でもそうよね」
 ルナが悩ましげにうなる。
「正しい道順をこの交差点から探すなんて……果てしなく遠い道のりだわ」
 しなやかな指を、ランドの描いた十字路から角ごとに動かしてみせる。その軌跡を見て、ロランもため息をついた。ランドは数本しか線を描いていないが、正確にはどこからどこまでがこの階の限界かわからないのだ。十字路をいくつ交差すれば正解にたどり着けるのだろうか。
「まあ、行ってみようよ」
 図を手に、ランドが立ち上がった。
「ぼくが道を描くから。でも、あまり難しく考えない方がいい気もするな」
 まだ不安そうなロランとルナに、ランドは軽く目くばせした。
「とりあえず、ぼくの言うように行ってみないかい?」


 ランドに背を押されるようにして、再びロランは回廊へ足を踏み出した。開始地点は、先ほどの広間から左、ランドの図では平行線の上側に当たる場所だ。そしてここが、ロラン達が1階から上ってきた始まりの地点でもある。
 止まって、とランドがロランを引きとめた。
「最初の十字路は通過。そのまままっすぐ行こう。で、次の十字路に来たら、左右の部屋をのぞいてみよう」
「左右の?」
「うん。この階は平行の左右が環になってるだけじゃなく、上下も同じ所につながる仕掛けになってる。でも平行線は1階への階段がある広間に通じてるんだ。つまり……」
「わかった!」
 ルナが目を輝かせた。
「いくら左右の方向を探しても、そこは1階の階段の広間に通じるだけだから、意味がないのね」
「正解です」
 ランドはにっこりした。ロランも納得がいく。
「そうか……! 正解は左右の環の間にある部屋のうち、どれかってことか」
「そう。だから、順番に見て行けば、必ず何番目かに階段があるはずだよ」


 果たして。
 ランドの推察通り、ロラン達は広間から左へ進んだ三つ目の十字路、その左側の部屋に、上へ通じる階段を見つけたのだった。