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蒼雪庵

いまだに推敲中

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・41

「私、焦ってたみたい……。早くハーゴンのもとへ行って、お父さま達の仇(かたき)を討ちたい。気がついたらいつも、そのことばかり考えているから」
「うん。わかるって言っちゃいけないけど、……わかるよ」
 ランドらしい言い方に、ルナは癒されたように微笑んだ。広間の向こうへ目をやる。ロランが、片方の階段から下りてきて、すぐ隣の階段へ向かった。そちらも外れらしい。ふと、つぶやく。
「ロランって、本当にあなたのこと大切なのね。二人とも昔から仲良かったけど、なんだかそれ以上みたい」
「そう……かなぁ?」
「そうよ。私のことは女だから守らないといけないと思ってるけど、あなたのことは……」
 言ってから、ルナは不思議そうに見つめてくるランドに、いたずらっぽく笑った。
「やーめた。教えてあげない」
「なんだよう」
「だめだめ」
 追いかけてくる視線から逃れるように、ルナは尻を払って立ち上がった。そこへ、ロランが走って戻ってくる。ルナが尋ねた。
「どう、ロラン?」
「だめだ、ランドの言うとおりだったよ。全部ただの小部屋だった」
「じゃあ、一度下へ降りて別の階段を探すしかないわね」
「ああ。ランド、立てるか?」
「ん」
 ロランが、ランドの手を引いて立ち上がらせた。ふと、ルナのまなざしに気づく。
「……ルナ?」
「あ、ううん。なんでもない。行きましょう」
 ルナが珍しく先へ立って降り口まで歩き出した。ロランが荷物を担ぎ直して続き、最後にランドが歩く。
(……守りたいのは、ぼくも同じだよ)
 二人の背を追いながら、ランドは思っていた。
(守られてるだけじゃだめだ。今のままじゃ、ロランやルナの助けにならないもんな。もっと頑張らなきゃ……)
 ランドの遠ざかる背中を、あのタホドラキーが、離れた所で羽ばたきながら見つめていた。



 ランドいわく「宝はわざと遠回りさせる」。
 1階まで戻ったロラン達は、室内で見つかった階段をあえて無視し、塔の外壁を探った。すると北東側に上り階段を発見し、これを上ることにした。
「うわあ、た、高いよう」
「足を踏み外すなよ、落ちたらひとたまりもないぞ」
「下はなるべく見ない方がいいわね……」
 吹きさらしの細長い通路が外壁にあり、それを渡って先に続く階段を順々に上がっていく構造である。
 そこから見る眺めは城の尖塔より高く、はるか向こうまで見渡せた。あれだけ苦労して進んだ森や浜も小さく、短く見える。
 ロランとランドがラーの鏡を探す途中で休憩した湖も、手鏡のように青く輝いていた。そのさらに西にかすむ黒いもやは、ムーンブルク城だろう。
 上がれば上がるほど風が強くなり、景色を楽しむ余裕は徐々に減って、3人は壁に張り付くようにして進んだ。
 4階付近まで来ると、階段の途中に柱で仕切られた別の空間があり、逆方向の上り階段が見つかった。
「どうする?」
 わずかに振り向いて、ロランが訊いた。ううん、とランドはうなった。
「いかにも脇道だね。ぼくの勘だと、その階段は怪しいと思う」
「頂上にお宝ってのも、よくある話でしょ?」
 ルナも言う。ロランは迷い、まず頂上を目指すことにした。ここまで来たら、頂上を見てみたかったからである。
 二人も異論はなく、またひたすら上へのぼった。しかし、ようやくたどり着いた先は、柱が立って立派な、少し広い部屋というだけだった。
「見晴らしがいいかと思ったのに……」
 明かり取りの窓以外完璧に閉じられた石造りの空間に、ランドはがっかりした。
「ごめん、二人とも。無駄足だったな」
 ロランがすまなそうに言うと、ルナが「そうでもないわよ」と、部屋の奥を指さした。
「宝箱だわ!」
 もしかしたら風のマントが入っているかもしれない。3人は期待して、大きな長持ほどの赤い箱へ駆け寄った。ロランが代表して開ける。鍵はかかっていなかった。
 金属で縁取りされた古風な箱は、きしみもなく開いた。中を見た3人は、同時にがっかりする。箱の底には、手のひらに載るくらいの小箱が置いてあった。
「マント……それに入ってない、よね……」
「そんなぁ」
 ランドが苦笑し、ルナはため息をついた。ロランは、小箱を取って開けてみた。
「指輪だ」
「あっ、それ祈りの指輪じゃない?」
 絹の赤い布張りが施された箱には、青く澄んだ丸い石を持つ金の指輪が納められていた。のぞき込んだルナがうれしそうな顔をする。
「祈りの指輪って、福引きの景品の?」
 ロランはまじまじと指輪を見つめた。指にはめて祈れば、魔力を回復させてくれるという道具だ。しかし、あとでランドから聞いたところによると、あまり使いすぎると、宝石に蓄積された魔力が尽きて壊れてしまうのだという。魔道士の杖は何度使っても壊れないのだが、攻撃魔法と回復魔法の系統の違いらしい。
「福引きの景品を誰かがここに置いたってわけじゃなさそうだけど……もらっておきましょうよ」
「そうだな。持ち主もいなさそうだし」
 指輪は、ルナが持っていることにした。いざとなったらランドも使わせてもらうということで折り合いをつけ、ルナは左手の中指にそれをはめた。
「さて、残るはやっぱり、あの階段か」
 ロラン達は再びもとの階段を戻り、脇にあった階段をのぼった。それは塔の反対側に続いており、のぼり着いた5階付近では、今度は下りの階段に切り替わっていた。
 またしても壁沿いを慎重に進む。すると階段は内部へ入り、部屋につながっていた。そこにはまた下り階段がある。壁沿いを進まなくて済んだ気楽さに、3人の足は速まった。
 そして2階まで来ると、部屋の様子が一変していた。青と白の連続模様で彩られた美しい床が、今までの無機質な石の空間に慣れた目に鮮やかだった。