蒼雪庵

いまだに推敲中

DQⅡ自作小説

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・176

【持たざる者】 静かだった。 真っ白い天から、雪がはらはらと落ちてくる。怖いほど音がなかった。 押し迫る光芒に、気を失っていたらしい。ロランはうつ伏せていた雪から顔を上げた。すぐ目の前に、橙色のマントがかすかな風に裾をはためかせている。「ラン…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・175

【献身】(ここまでか……。僕の力だけでは、もう……)「――させないっ!」 ロランの目の前が暗くなりかけた時、まだ少年らしさの残る声が鋭く響き渡った。 さかしまにアークデーモンの手にぶら下げられていたランドだ。腰に下げているはやぶさの剣は、顔の傍に…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・174

「危ない!」 ルナが叫んだ。またイオナズンが来るとロランも察し、素早くアークデーモンの肩を蹴って離れる。そこへ、ギガンテスが棍棒を振り上げて乱入してきた。構わずアークデーモンは呪文を唱える。大爆発がギガンテスも巻き込んで炸裂した。「――っ!」…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・173

緑色の肌の巨人ギガンテスが、巨木を削っただけの無骨な棍棒を振り下ろした。ロランは動きを見切って回り込み、足の腱を切った。動きが取れず膝を突いたところを、跳躍して巨大な単眼へ斬りつける。苦鳴を上げ、ギガンテスは棍棒を放り出して両手で傷を押さ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・172

ロランはランドと共にサイクロプスへ斬りかかった。サイクロプスは腰を落としたまま丸太のような腕を振るった。ランドは身かわしの服の効果も手伝って、軽やかにその腕を蹴って舞い上がると、ロトの剣をサイクロプスの単眼に突き立てた。サイクロプスが怒濤…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・171

【魔群侵攻】 地鳴りが聞こえたのは、未明のことだった。ロランははっとして目を覚ました。風が強い。吹雪になっている。「二人とも、起きろ!」 たき火はわずかな炎を炭化した枝に残していた。土を被せて完全に消し、ロランは素早く毛布を剥がして丸める。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・170

【雪の一夜】 ランドが笑ってくれたので、ロランは少し安心した。 ロトの剣は不用になったから譲るのではなかった。伝説の勇者の武器であり、ずっとロランの片腕となって敵を倒してきた剣である。ものいわぬ戦友が自分から離れるのは寂しかったが、ランドの…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・169

太陽はわずかに西へ向かっているが、まだ日は高い。雪は容赦なく陽光を針と化し、ロラン達の目を突く。ロランはロトの兜のまびさしを下げ、ランドは防風眼鏡(ゴーグル)を下ろし、ルナはフードをなるべく目深にかぶって照り返しを防ぎながら歩いた。 厳寒期…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・168

第4章 神々の庭【天と地の境で】 群青の空の下、ローブ姿の集団が雪原を歩いていた。先頭を行くのは、背が高く容貌も際立った若い男である。 雪原を渡る凍てついた風に、男の肩まで届く黒髪がなびいた。しかし白皙のおもてに揺らぎはなく、金色の瞳はひたす…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・167

ロランの胸がゆっくりと膨らみ、長く息を吐き出す音を、ルナは緊張して聞いていた。やがてロランのまぶたがわずかに震え、まばたきを繰り返す。「……僕は……」「……ロラン!」 本当に生き返ったのだ。ルナは横たわったままのロランの手を取り、声を殺して泣いた…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・166

ルナはランドの胸の内を探るように見つめてきた。一瞬の疑いは確信に変わり、だが、どこかとがめるような目で。「あなた……使えるのね? 死者を蘇らせるザオリクの呪文を」 ランドは小さくうなずいた。「そう、だから……なのね」 ルナは言いかけ、口に出かけた…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・165

「ああっ……」 ルナはがくがくと震えていた。最悪の事態が起こっている。だが頭がそれを認めたがらないでいた。 傍らではランドも短い息をしながら震えていた。脂汗が目元を伝う。キラーマシンは倒れたロランを無視し、こちらへ歩み寄ってきた。淡々とこちら…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・164

ドラゴンは竜王の忠実な配下として知られ、ロラン達の先祖が竜王に勝利して以来、地上に姿を見せることはなかった。緑の鱗の竜はもっとも下位とされ、だからこそハーゴンの召喚にも応じたのだろうか。 しかしそれでも、竜族の持つ威圧感は場を圧倒した。4体…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・163

【初めての死】 6階までの道のりは、過酷を極めた。 稲妻の剣があった階層は、そこから下へ降りる階段があるのみだった。降りた先で、剣のあった場所が2階と判明し、ロランが推測したように、やはり地上付近まで落ちてきたのである。 山の中腹から地上へ落…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・162

「それを敵に向かって振りかざせば、何か魔法が使えるはずよ。名前の通りなら、きっと稲妻が呼び出せるはず」「すごいよ、ロラン!」 ランドがはしゃぐが、ロランは両手で剣を目の前に捧げ持ったまま、無言でいた。「ロラン?」 ランドはロランの顔をのぞき…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・161

落ちる。 落ちる。 落ちる――。 今度はロランが二人を両手につないでいたが、冷たく重い空気を切って矢のように落ちながら、これでは風のマントでも空気をはらめず助からないだろう、と考える間があるほどに長い落下だった。 だが、風のマントは3人を見捨て…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・160

【稲妻の剣】 闇は冷たく、濃さを増していた。 ロンダルキアへの洞窟5階。ロラン達は再びここまで到達していた。邪神の像の力で開いた洞窟の入り口はそのままであったが、そこから魔物の群れが地上へ押し寄せたという話は聞かない。内部は不気味なほど静か…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・159

「勇者ロトの血だけがそれをなし得るのは、なぜですか?」 今度はランドが尋ねた。ルビスは答えた。 ――ロトがこことは別の世界からきた若者であることは、すでに知っていますね。ロトは、他の人間にはない特殊な魂と宿命を背負って生まれてきた者です。長く…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・158

ルビスは、静かにルナの激高を受けとめていた。ゆらゆらと光る青い光の中心に、何も認めることはできない。だが、気配が悲しんでいた。深く同情していた。 ――勇者ロトの末裔、ルナ。あなたは竜王の末裔と会って話しましたね。彼は、何と言っていましたか。 …

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・157

【精霊の祠】 精霊の祠は、紺碧の海にぽつんと浮かんでいた。 真っ白い石材で造られたそれは、ごく小さな島に建てられており、ロラン達の持つ魔法の地図がなければ発見できなかっただろう。それほどの小ささだった。 島は、一つの岩を浮かべたようなこぢんま…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・156

「小さいころ、二人に会えなかったことね……」 3人で、ルナの焼いたおいしいケーキをすっかり食べ終わったあと、ルナはカップを両手で口元に持ち上げ、つぶやくように言った。「私もずっと考えてた。今までは、お父さま達が時間を作ってお互いに交流する機会…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・155

流れてくる黒煙を追い、二人が慌てて厨房へ降りると、扉を開けられたルナは「だめっ!」と叫んだ。「来ちゃだめ、お願い!」「だって、煙が!」「魔物が出たのか?!」 ランドとロランが口々に尋ねると、ルナはしとやかな頬を真っ赤にしてぶんぶんと首を振っ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・154

「すべての戦いが終わったら、あの宝を運び出した方がいいかもしれないな」「ああ、オークキングの?」 察しのいいランドに、ロランは微笑みかける。「うん。あれは長年かけて、オーク達が人々から奪ったものだし……あれだけあれば、邪教団に襲撃された村とか…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・153

【最後の航海】 冬の日差しは、真昼でもどこか薄暗い。 ローレシア城入り口に立つ若き衛兵は、いつもと代わり映えしない城下の街並みを眺めながら、早く春が来ないかと思っていた。 比較的温暖なローレシア地方とはいえ、厳寒期の寒さはムーンブルク地方を上…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・152

「遅いッ!!!」 聖なる祠を守る壮年の賢者は、上品な顔を怒りに染め、勇者の子孫3人を怒鳴った。ロラン達は身を縮めて、素直に叱責に耐えるしかなかった。 ロトの鎧を入手したロラン達は、ロンダルキア登頂をいったん中断し、ランドのリレミトの呪文で洞…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・151

「よかった、無事で……」 たおやかな手で、ルナは鎧の肩当てをなでた。ランドが嬉々としてロランを見る。「ねえロラン、さっそく着けてみなよ!」「えっ、今か?」「そうだよ、せっかく見つけたんだしさ」「そうね、私も見たいわ。ロランが身に着けたところ」…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・150

オークキングの槍がロランの右肩をかすった。真空波が生じ、ロランの頬を切り裂く。辛うじて顔を逸らし、浅い傷で済んだ。もし逸らすのが遅れていたら、顎の骨まで切り裂かれていただろう。「はあっ!」 相手の攻撃が終わった直後を見計らい、ロランは跳躍し…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・149

声は、猪がうなる声に似ていた。がちゃがちゃと杯が鳴り合う音もする。 強い獣臭が鼻を突く。そこに酒精が漂い、肉を焦がした臭気も混ざり合って、胃がひっくり返そうになる。ロラン達はとっさに口と鼻を片手で覆っていた。死臭とはまた違ってひどい臭いだ。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・148

【巨猪の王】 長い階段をのぼって3階に上がると、洞内に詰まっていた死臭が薄くなった。 死肉や血液、臓腑、糞尿が混ざり合って腐りゆく臭い。それを初めて嗅いだのは、滅ぼされたムーンブルク城でのことだった。 吸うと鼻腔や肺に突き刺さり、腹に鉛のよう…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・147

「……さっき、そこから入ってきただろう? ほら、その右手の」「そうかしら? この戦いで、私達、結構動きまわってたわよ。位置がずれたかも……」「まさか……」 ロランは、もと来た方だと思われる出入り口を見た。まあまあ、とランドがなだめる。「あまり深く考…