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蒼雪庵

いまだに推敲中

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・187

【手をつないで】(真っ暗だ……) ぼんやりとロランは暗闇にたゆたっていた。 胸の重苦しさは消え、 とても安らいでいた。自分へ向けた怒りや憎しみは、遠い過去のものとして胸に納まっている。 ずっと握りしめていた骨の感触がない。無数の人骨で作られた呪…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・186

「ロラン、立てる?」 ランドがアークデーモンと渡り合っている間に、ルナがロランを助け起こそうとした。ロランは弱くかぶりを振った。「力が入らないんだ……。動けない」「剣の呪いのせいね。待ってて。今、薬を……」 ルナの背後で断末魔が響く。ランドが剣…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・185

「――いい声だ」 嗤いを含む、くぐもった声がした。ロランは弾かれたように顔を上げ、その場に身構える。 めきめきと灌木や木々を薙ぎ倒しながら、紫色の牛頭の悪魔がこちらへ歩んできた。アークデーモンである。「これは美味そうな子どもだ。……泣いている子…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・184

「――いい声だ」 嗤いを含む、くぐもった声がした。ロランは弾かれたように顔を上げ、その場に身構える。 めきめきと灌木や木々を薙ぎ倒しながら、紫色の牛頭の悪魔がこちらへ歩んできた。アークデーモンである。「これは美味そうな子どもだ。……泣いている子…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・183

【想う心は】 「……ロラン」 ランドは両手で顔を覆っていた。「そんな……ぼくのせいで、呪われてしまっただなんて」 卓を挟んで向かいに座る娘も、沈痛に目を伏せた。「ごめんよ、ロラン、ごめん……」 ランドはすすり泣いた。娘は席を立ち、ランドの側に立つと…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・182

「よくぞ来た、ルナよ。わしはそなたらをずっと待っておった」 祠の中央は聖堂となっている。祭壇の前に、初老のたくましい男が立っていた。金と緑、赤を組み合わせた神官の服を着ている。「ロランとランドに会わせてください。一緒に連れて来たんでしょう?…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・181

温かいスープの香りがした。ルナはぼんやりと天井を見上げる。 ふかふかのベッドに寝ていた。白い石でできた天井には、色とりどりの花の絵が描かれている。(私……あの時……)「お目覚めになりましたか」 ふわりと風がなでるような、清楚な声がした。びくりと…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・180

【窮地と叫び】 ロランは、白骨でできた剣を振り上げ、バズズの影へ斬りかかった。3体の悪魔の中では一番小柄で倒しやすそうに見えたからだ。 暗転した空は薄暮の明るさをとどめている。薄闇の中、悪霊の神々の影だけがくっきりと濃かった。 ロランの打ち振…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・179

【無限の花園にて】 見渡す限り、花畑だった。 空は明るい白。 どこかで小鳥がさえずっている。 ランドはぼんやりと卓にかけていた。真っ白な円卓で、金で流れる水と花が縁取ってある。(ここは……) ランドはゆっくりと首を巡らせてあたりを見回した。花畑と…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・178

夜明けになってから、ロランはルナと山を下りた。空は寒々と曇っている。 山といっても、乾いた土と岩、そして凍った雪ばかりの山塊だ。疲労が極まっているルナは、何度も下り道で足を取られていたが、ロランにはほとんど気遣う余裕がなかった。 左手にはロ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・177

日が落ちた。だが、ロランは淡々とした歩みをやめない。空は丸い月が克明に浮き上がっていた。ルナは何度も視界がぼやけ、意識を失いそうになった。でもロランを見失うわけにはいかなかった。気力を振りしぼって歩き続ける。 ランドを抱えたロランは、進む方…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・176

【持たざる者】 静かだった。 真っ白い天から、雪がはらはらと落ちてくる。怖いほど音がなかった。 押し迫る光芒に、気を失っていたらしい。ロランはうつ伏せていた雪から顔を上げた。すぐ目の前に、橙色のマントがかすかな風に裾をはためかせている。「ラン…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・175

【献身】(ここまでか……。僕の力だけでは、もう……)「――させないっ!」 ロランの目の前が暗くなりかけた時、まだ少年らしさの残る声が鋭く響き渡った。 さかしまにアークデーモンの手にぶら下げられていたランドだ。腰に下げているはやぶさの剣は、顔の傍に…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・174

「危ない!」 ルナが叫んだ。またイオナズンが来るとロランも察し、素早くアークデーモンの肩を蹴って離れる。そこへ、ギガンテスが棍棒を振り上げて乱入してきた。構わずアークデーモンは呪文を唱える。大爆発がギガンテスも巻き込んで炸裂した。「――っ!」…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・173

緑色の肌の巨人ギガンテスが、巨木を削っただけの無骨な棍棒を振り下ろした。ロランは動きを見切って回り込み、足の腱を切った。動きが取れず膝を突いたところを、跳躍して巨大な単眼へ斬りつける。苦鳴を上げ、ギガンテスは棍棒を放り出して両手で傷を押さ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・172

ロランはランドと共にサイクロプスへ斬りかかった。サイクロプスは腰を落としたまま丸太のような腕を振るった。ランドは身かわしの服の効果も手伝って、軽やかにその腕を蹴って舞い上がると、ロトの剣をサイクロプスの単眼に突き立てた。サイクロプスが怒濤…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・171

【魔群侵攻】 地鳴りが聞こえたのは、未明のことだった。ロランははっとして目を覚ました。風が強い。吹雪になっている。「二人とも、起きろ!」 たき火はわずかな炎を炭化した枝に残していた。土を被せて完全に消し、ロランは素早く毛布を剥がして丸める。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・170

【雪の一夜】 ランドが笑ってくれたので、ロランは少し安心した。 ロトの剣は不用になったから譲るのではなかった。伝説の勇者の武器であり、ずっとロランの片腕となって敵を倒してきた剣である。ものいわぬ戦友が自分から離れるのは寂しかったが、ランドの…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・169

太陽はわずかに西へ向かっているが、まだ日は高い。雪は容赦なく陽光を針と化し、ロラン達の目を突く。ロランはロトの兜のまびさしを下げ、ランドは防風眼鏡(ゴーグル)を下ろし、ルナはフードをなるべく目深にかぶって照り返しを防ぎながら歩いた。 厳寒期…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・168

第4章 神々の庭【天と地の境で】 群青の空の下、ローブ姿の集団が雪原を歩いていた。先頭を行くのは、背が高く容貌も際立った若い男である。 雪原を渡る凍てついた風に、男の肩まで届く黒髪がなびいた。しかし白皙のおもてに揺らぎはなく、金色の瞳はひたす…