蒼雪庵

いまだに推敲中

第四部

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・199

(終わった……) ロランは頭から落下した。もう指一本動かせない。 「ロラン!」 力を振り絞ってランドがロランへ駆け寄った。肩から地面に落ちたロランを抱き起し、べホイミをかける。 「大丈夫?! どこも痛くない?」 「ああ、もうだめかと思ったけど……う…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・198

雷鳴がとどろいていた。大蛇のような稲妻が周囲を駆け巡っている。「――っ!」 ロランは、拳で床を打った。「勝てないのか、どうやっても!」 拳を床に置いたまま、ロランは顔を上げなかった。ランドも沈痛にうつむいている。(本当に、本当にそうなの……?) …

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・197

【破壊神】 これが神だというのか。ロラン達は慄然としてそれを見上げた。 頭部に長く伸びた二本の白い角。顔の両脇には鰭(ひれ)が生え、鼻はなく、牙が生えそろった巨大な口はこめかみまで裂けている。 4本の腕は三本の鉤爪で虚空をつかみ、宙を泳ぐ足も…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・75

小さな村には宿屋ではなく、一軒だけ民宿があった。だが長く旅人が訪れないので、宿の主人は裏の畑で大根を抜いていた。「すみません。一晩泊めていただきたいのですが……」 ロランが声をかけると、主人は折り曲げていた腰を伸ばして驚いた顔をした。「おお、…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・74

いきさつはともかく、食事当番の交代制は良い気分転換になった。最初はロランの番だった。海育ちのせいか、味つけは塩が中心だが、スープも焼き物も、素材の味を引き出していると二人に評判が良かった。刃物の扱いも慣れているので、切り方も鮮やかである。 …

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・73

ロラン達は長旅ですすけた顔で、山間に浮かぶ小さな村の入り口に立っていた。畑作と牧畜で自給自足している寒村に見えるが、ここに羽衣作りの職人が住まうという。 ここまでの道のりの遠さがどっと押し寄せ、安堵に崩れそうな膝を励ましながら、まず宿屋を探…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・72

【最後の巨匠】「そら、これでどうだい?」「うむう……」 パチリと指された将棋の駒に、小柄な老人がしわ深い顔をぎゅっとゆがめる。顎に指をかけ、前のめりに盤をにらみ、白い口髭をもぐもぐ言わせてうなる姿に、小太りの中年男は「ふう」と吐息を漏らした。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・71

壁が崩れて外がむき出しになった回廊を、老爺は影のように歩いた。風がまともに吹きつけ、ロラン達は風圧にあおられて通路から足を踏み外さないよう歩くのがやっとだったのに、老爺は足取り乱さず先を行って、次の階段で待ちかまえている。 まともな人間でな…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・70

「どう思う、ロラン」 また3階へ戻りながら、ルナが訊いてきた。ロランはすぐに答えることができた。「旅の扉が、ベラヌールにあるんだ。きっとそれが、ロンダルキアのどこかにつながってるんだ」「そうよね。私もそう思ったわ。でも噂でしか伝わってないっ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・69

ランドの言い方はまわりくどかったが、つまり、かがり火のついていない部屋の階段は行かない方が良いということだ。他と明らかに違うからといって、それが正解とは限らないからである。 すると残るは三つ。選ぶ根拠もないので、一つ一つ確かめることにした。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・68

ランドの予測通り、夕方、アレフガルドと大灯台島の中間で黒雲が湧き起こった。ルプガナから航海して初めての嵐だ。 船は横波に甲板を洗われ、上下左右に激しく揺れた。船や海に慣れたロランはともかく、ランドとルナがひどい船酔いに襲われた。「二人とも、…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・67

【星と老人】 薄闇の中、コウモリに似た翼を持つ紫の毛皮の大猿が床に浮かぶ大きな地図を見おろしていた。輝く三つの光点が、アレフガルド大陸から南へ移動している。 三つの光のうち、真ん中の一つは残る二つより光が弱々しかった。「ハァハァハ……。さすが…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・36

「うそ……だろ……」 かすれた声で、ランドがつぶやいた。「不死者(アンデッド)? キースって人、最初から死んでたの?」「……ああ。僕は、彼に触れた時に、そうじゃないかと思ってた」「――なんで教えてくれなかったんだよ?!」 振り向き、ランドが怒鳴った。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・35

【決意】 フィリアの宿にルナを連れて行くと、フィリアはもちろんルナの顔を覚えていて、涙を流して無事を喜んだ。 心づくしのもてなしに、ロランとランドの疲れも癒されたが、ルナの表情は硬いままだった。 翌朝すぐに、ルナはムーンブルク城へ行きたいと二…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・34

ルナは、ムーンペタの教会付近に二人を連れてきた。そこには天幕がいくつか張られていて、数十人の人々が生活しているようだった。 ロランとランドはすぐにわかった。ムーンブルク城下町から逃げてきた難民の仮住まいだということに。 教会から数人の尼僧が…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・33

ひとまず塔の位置を地図に記すと、二人は丘を下りて池へ向かった。気候が良いせいか、魔物はさほど襲ってはこず、森を分け入って先へ進む。 ムーンブルクはローレシアより南にあるせいで、植物も豊かだ。だが、みっしりと生えた木々が徐々に減り、枯れ木が目…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・32

【ラーの鏡】「まだ怒ってるのか」「……別に。ロランって、意外と冷たいんだなって思ってただけさ」 騎士の教えてくれた土地まで、残った食料でも行けると踏んで、ロランとランドはムーンブルクの廃墟を出たのち、すぐに東へ向かうことにした。 体は疲れてい…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・31

ロト王族同士で、避難路のありかは伝えられていた。 ムーンブルク城中央にある庭園は、一度城の外に出て壁沿いに下り、城南西壁にある別口から入らないと行けない。薬草も残り少なく、次々と襲いかかってくる魔物に手を焼きながら、二人は苦労して庭園に入っ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・30

それからも無数の遺骸を目にしながら、無言のうちに二人は城へと着いた。美しかった外壁は血と泥にまみれ、煤(すす)で黒く穢されていた。見上げるのもわずかの間。二人は入り口をくぐった。(頭が痛い……瘴気のせいなのか) 歩くごとに、頭痛が響く。体が倦…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・29

【光はなく、死のみ】「あの小犬、ちょっとかわいそうだったね」 ムーンブルク城へ至る平原を西に歩きながら、ランドがつぶやいた。「ああ……。でも、この辺りの魔物はローレシア大陸よりも手強い。とても連れては行けないよ」「うん……」 ロランも、ムーンペ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・28

そろそろ昼になりそうだったので、二人は福引所へ向かうことにした。池を離れて賢者の庵に通じる小屋へ回り込むと、野良らしい白い小犬が、二人を見つけて駆け寄ってきた。「あ、犬だ。かわいいなあ」 尻尾を振り、さかんに吠えたてる小犬を見て、ロランがに…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・27

翌朝、フィリアに弁当を持たせてもらい、ロランとランドは宿屋を出た。すぐに城へ向かいたかったが、まず装備を調えるため、武器と防具の店を訪ねる。まだ準備中のところを頼みこみ、店を開けてもらった。「お客さん、これはいいよ。鉄の槍に鋼鉄(はがね)…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・26

【人と人とが出逢う町】 サマルトリア城から南に下ると、ムーンブルク半島を望む海峡がある。その突端を結ぶ位置に、白い石でできた門を持つ美しい関所があった。 ムーンブルク半島を結ぶ海底道、〈ローラの門〉である。 かつてロトの子孫の勇者――ローレシア…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・25

「勝負!」 キースは悪魔神官へ向かって斬りかかった。悪魔神官は、両手の棍棒を軽々と構え、交差させて剣を受けとめる。ぎりぎりと押し返しながら、キースは背後のルナへ向かって叫んだ。「姫様、今のうちに! お逃げください、早く!!」 ルナはひどくふる…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・24

同時刻。城内の西にある拘留所の牢で、鎖につながれた仮面の男はゆっくりと顔を上げた。目の部分には、翠色をした大きく丸い宝玉がひとつきり。口に当たる部分には、長方形の穴が開いている。廊下の灯火に、その穴が上向きに歪んで見えた。 嗤(わら)いの形…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・23

【悪夢こそが我が絆】 暗い眠りから目が覚めて彼女が気づいたのは、立てない、ということだった。 両腕と両脚はまっすぐ前に伸び、四つん這いで"立つ"ことはできる。 だが腰から下の脚で地面に立つことが、とても不自由になっているのだ。 彼女は何度も後ろ…