読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

蒼雪庵

いまだに推敲中

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・195

【ベリアル】 双塔を支える5階の階段は、左の塔につながっていた。終わりがないのではと思うほど長い階段を上りつめると、屋上に出た。正十字形になった頂上部の右――ロラン達から見れば正面から、床材を並べた細い橋が渡っている。橋には手すりがなかった。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・194

【バズズ】「よぉおおこそ」 嫌らしい笑みを満面に、紫色の猿魔が迎え出た。 悪霊の神々の一柱――狡猾の主、バズズである。 5階は、左右に壁と柱が断続的に並ぶ吹き抜けの回廊だった。バズズの背後に、双塔へつながる階段室が見える。 風が出始めていた。ま…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・193

刃はアトラスの足の甲を割った。鮮血が噴き、ロランの顔と胸元に飛び散る。アトラスが吼え、傷つけられた足を振り上げた。「くうっ!」 剣を手放すわけにはいかない。柄を握ったロランは乱暴に振り回された。稲妻の形をした刃はアトラスの肉に食いこみ、どん…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・192

【アトラス】 教壇の奥には、上階へ通じると思われる巨大な部屋があった。しかし、教壇の真後ろから部屋の外周にかけて、強力な結界が青白い光を放っている。部屋の内部は堅牢な壁に囲まれていて、見ることはできない。 ランドがトラマナの呪文をかけ、結界…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・187

【手をつないで】(真っ暗だ……) ぼんやりとロランは暗闇にたゆたっていた。 胸の重苦しさは消え、 とても安らいでいた。自分へ向けた怒りや憎しみは、遠い過去のものとして胸に納まっている。 ずっと握りしめていた骨の感触がない。無数の人骨で作られた呪…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・186

「ロラン、立てる?」 ランドがアークデーモンと渡り合っている間に、ルナがロランを助け起こそうとした。ロランは弱くかぶりを振った。「力が入らないんだ……。動けない」「剣の呪いのせいね。待ってて。今、薬を……」 ルナの背後で断末魔が響く。ランドが剣…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・185

「――いい声だ」 嗤いを含む、くぐもった声がした。ロランは弾かれたように顔を上げ、その場に身構える。 めきめきと灌木や木々を薙ぎ倒しながら、紫色の牛頭の悪魔がこちらへ歩んできた。アークデーモンである。「これは美味そうな子どもだ。……泣いている子…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・184

「――いい声だ」 嗤いを含む、くぐもった声がした。ロランは弾かれたように顔を上げ、その場に身構える。 めきめきと灌木や木々を薙ぎ倒しながら、紫色の牛頭の悪魔がこちらへ歩んできた。アークデーモンである。「これは美味そうな子どもだ。……泣いている子…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・183

【想う心は】 「……ロラン」 ランドは両手で顔を覆っていた。「そんな……ぼくのせいで、呪われてしまっただなんて」 卓を挟んで向かいに座る娘も、沈痛に目を伏せた。「ごめんよ、ロラン、ごめん……」 ランドはすすり泣いた。娘は席を立ち、ランドの側に立つと…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・182

「よくぞ来た、ルナよ。わしはそなたらをずっと待っておった」 祠の中央は聖堂となっている。祭壇の前に、初老のたくましい男が立っていた。金と緑、赤を組み合わせた神官の服を着ている。「ロランとランドに会わせてください。一緒に連れて来たんでしょう?…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・181

温かいスープの香りがした。ルナはぼんやりと天井を見上げる。 ふかふかのベッドに寝ていた。白い石でできた天井には、色とりどりの花の絵が描かれている。(私……あの時……)「お目覚めになりましたか」 ふわりと風がなでるような、清楚な声がした。びくりと…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・180

【窮地と叫び】 ロランは、白骨でできた剣を振り上げ、バズズの影へ斬りかかった。3体の悪魔の中では一番小柄で倒しやすそうに見えたからだ。 暗転した空は薄暮の明るさをとどめている。薄闇の中、悪霊の神々の影だけがくっきりと濃かった。 ロランの打ち振…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・179

【無限の花園にて】 見渡す限り、花畑だった。 空は明るい白。 どこかで小鳥がさえずっている。 ランドはぼんやりと卓にかけていた。真っ白な円卓で、金で流れる水と花が縁取ってある。(ここは……) ランドはゆっくりと首を巡らせてあたりを見回した。花畑と…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・178

夜明けになってから、ロランはルナと山を下りた。空は寒々と曇っている。 山といっても、乾いた土と岩、そして凍った雪ばかりの山塊だ。疲労が極まっているルナは、何度も下り道で足を取られていたが、ロランにはほとんど気遣う余裕がなかった。 左手にはロ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・177

日が落ちた。だが、ロランは淡々とした歩みをやめない。空は丸い月が克明に浮き上がっていた。ルナは何度も視界がぼやけ、意識を失いそうになった。でもロランを見失うわけにはいかなかった。気力を振りしぼって歩き続ける。 ランドを抱えたロランは、進む方…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・176

【持たざる者】 静かだった。 真っ白い天から、雪がはらはらと落ちてくる。怖いほど音がなかった。 押し迫る光芒に、気を失っていたらしい。ロランはうつ伏せていた雪から顔を上げた。すぐ目の前に、橙色のマントがかすかな風に裾をはためかせている。「ラン…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・162

「それを敵に向かって振りかざせば、何か魔法が使えるはずよ。名前の通りなら、きっと稲妻が呼び出せるはず」「すごいよ、ロラン!」 ランドがはしゃぐが、ロランは両手で剣を目の前に捧げ持ったまま、無言でいた。「ロラン?」 ランドはロランの顔をのぞき…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・161

落ちる。 落ちる。 落ちる――。 今度はロランが二人を両手につないでいたが、冷たく重い空気を切って矢のように落ちながら、これでは風のマントでも空気をはらめず助からないだろう、と考える間があるほどに長い落下だった。 だが、風のマントは3人を見捨て…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・160

【稲妻の剣】 闇は冷たく、濃さを増していた。 ロンダルキアへの洞窟5階。ロラン達は再びここまで到達していた。邪神の像の力で開いた洞窟の入り口はそのままであったが、そこから魔物の群れが地上へ押し寄せたという話は聞かない。内部は不気味なほど静か…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・159

「勇者ロトの血だけがそれをなし得るのは、なぜですか?」 今度はランドが尋ねた。ルビスは答えた。 ――ロトがこことは別の世界からきた若者であることは、すでに知っていますね。ロトは、他の人間にはない特殊な魂と宿命を背負って生まれてきた者です。長く…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・158

ルビスは、静かにルナの激高を受けとめていた。ゆらゆらと光る青い光の中心に、何も認めることはできない。だが、気配が悲しんでいた。深く同情していた。 ――勇者ロトの末裔、ルナ。あなたは竜王の末裔と会って話しましたね。彼は、何と言っていましたか。 …

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・157

【精霊の祠】 精霊の祠は、紺碧の海にぽつんと浮かんでいた。 真っ白い石材で造られたそれは、ごく小さな島に建てられており、ロラン達の持つ魔法の地図がなければ発見できなかっただろう。それほどの小ささだった。 島は、一つの岩を浮かべたようなこぢんま…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・156

「小さいころ、二人に会えなかったことね……」 3人で、ルナの焼いたおいしいケーキをすっかり食べ終わったあと、ルナはカップを両手で口元に持ち上げ、つぶやくように言った。「私もずっと考えてた。今までは、お父さま達が時間を作ってお互いに交流する機会…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・155

流れてくる黒煙を追い、二人が慌てて厨房へ降りると、扉を開けられたルナは「だめっ!」と叫んだ。「来ちゃだめ、お願い!」「だって、煙が!」「魔物が出たのか?!」 ランドとロランが口々に尋ねると、ルナはしとやかな頬を真っ赤にしてぶんぶんと首を振っ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・154

「すべての戦いが終わったら、あの宝を運び出した方がいいかもしれないな」「ああ、オークキングの?」 察しのいいランドに、ロランは微笑みかける。「うん。あれは長年かけて、オーク達が人々から奪ったものだし……あれだけあれば、邪教団に襲撃された村とか…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・153

【最後の航海】 冬の日差しは、真昼でもどこか薄暗い。 ローレシア城入り口に立つ若き衛兵は、いつもと代わり映えしない城下の街並みを眺めながら、早く春が来ないかと思っていた。 比較的温暖なローレシア地方とはいえ、厳寒期の寒さはムーンブルク地方を上…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・49

なるべく荷物は軽くしようと、ルプガナに行くまでの食料や備品を吟味した。ルナも、愛用していた鍋をここに置いていくことに決めた。「大事に使ってちょうだいね」 泣く泣く、鍋やおたまを塔のすみに置く。数羽の海鳥が、珍しそうに見ていた。いずれ水飲み場…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・48

次々に襲ってくる魔物を蹴散らして7階まで来ると、吹き抜けの回廊は終わった。周囲を胸の高さまでの壁が覆っていて、展望台のようになっていた。眺めは素晴らしく、地平線と空の境目まで見渡せる。人が往来していたころは、観光でここにのぼる旅人も多くい…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・47

【風と勇気とマントと】 大砂漠のオアシスから北上したロラン達は、緩やかに弧を描く半島の先までたどり着いていた。西に青く霞むのは、目指すアレフガルド大陸だ。「これがドラゴンの角か……」 ロランは目の前に立つ高い塔を見上げた。青空に、蔦を所々から…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・46

遠く離れた所でせっせと洗濯板に泡を立てながら、ルナはロランとランドがはしゃぐ姿を見ていた。 あんなに笑っている二人を見るのは、小さいころ以来だ。お互いにふざけ合って、片方が背中から組み付いて水に押し倒せば、片方が腰に突進して抱きつき、水中に…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・45

砂漠に入ると、一気に気温が上昇した。靴の裏からも熱気が伝わってくる。土や草がないだけで、こうも変わるのかと思った。 「この砂の上に鍋をおいてみたいなぁ。卵が焼けるかもしれないよ」 顔を真っ赤に火照らせてランドがのんきなことを言うと、ルナが軽…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・44

「黙っててごめんなさいね。確証がなかったから、あえて言わなかったの。期待して来て、だめだったらがっかりしちゃうでしょ?」「それはいいけど、旅の扉が使えると良かったのか?」 ロランが言うと、ルナは少し肩をすくめた。「ええ。ドラゴンの角に行かな…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・43

【西の大砂漠紀行】 夜明けの清浄な光さえ拒むムーンブルク城下町の前に、ロランとランド、ルナが立っていた。瘴気が立ちこめている場所とそうではない所は、まるで線引きでもされたかのように見た目でもはっきりしている。ロラン達は、その境目にいた。 か…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・17

「とは言ったものの……」 リリザへの街道を歩きながら、ロランはやるせない気持ちで暮れていく空を眺めた。「またローレシアまで、何日も歩くのか……」 歩くことはつらくはない。ロランを憂鬱にさせるのは、行って、また無駄足になることだ。(今日はリリザで…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・16

サマルトリア城下町に着くと、ロランはすぐ城へ向かった。 城内1階には大聖堂があり、ここは日中、町の人々に開放されていて、人の出入りが多かった。犯罪率の低さでも有名だったこの町にも、ついにスリの集団が出たと、リリザの町で噂になっていた。 対策…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・15

【友よ、ここに】 今すぐにランドを追いかけたい気持ちだったが、何日もろくに休まずの強行軍だったので、さすがにロランも父の申し出を断れなかった。ランドもサマルトリアに帰ったのなら、向こうで自分を待っていてくれるに違いない。 父やマルモア達も話…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・14

急ぎ足で洞窟を出ると、ロランは空を見上げ、苦い顔をした。今の気持ちを代弁するように、木々の隙間から覗く空は曇っている。「やっぱり、使うしかないのか……」 背中の荷物を降ろし、道具袋からキメラの翼を取り出したロランは、重くため息をついた。金色の…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・13

【さまよう王子、二人】 ローレシア大陸の北東に、細長く延びた半島がある。切り立った断崖の際まで木々が生い茂り、訪れるのは海鳥ばかり。冬になれば風が吹き荒れ、人が住まうことのない寂しい土地である。 だが、サマルトリアの国境とその半島とは、橋が…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・12

アリシアはああ言っていたが、ランドはそこまで愚かではないし、弱い人間でもない。もちろんそれは、家族であるアリシアやサマルトリア王がよく知っていることだ。 ただ城の人間は、ここ一番でランドを信用しきれていない風はあった。本当に彼に任せていいの…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・11

「ロラン? お兄ちゃんがよくお話ししてた人?」「そうでございますよ、あのロラン王子様でございます。姫様、どうぞごあいさつを」 かしこまって女官がアリシアの後ろに控える。先にロランが膝を突き、アリシアの目を見つめた。「初めまして……じゃないかな…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・10

【のんき者の王子】 深い森の小道を、少年が一人、東へ向かって歩いていた。 春が進んで、日を追うごとに濃くなっていく木々の緑にも劣らぬ緑色の前掛けに似た長衣をまとい、ふくらはぎに届く長い橙色のマントをひらひらさせながら。 風よけの眼鏡を付けた皮…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・9

「さっき、店から男の子が出てきたんだけど……」 ふと、あの子どものことが思い出されて、ロランが何げなく口にすると、小隊長は「ああ」とうなずいた。「その子どもは、店主のかみさんが、ムーンブルクの兵士から預かったそうです。親戚同士だそうで」「いつ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・8

【南で燃えた赤い空】「ほうい、あんた。見えてきたぞう」 おおらかな中年の男の声に、うたたねをしていたロランは、はっとしてまばたきを繰り返した。心地よく揺れる馬車の荷台の中、木箱によりかかっていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。 体を起こ…