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蒼雪庵

いまだに推敲中

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・191

「我が幻術が破られたか……」 幾千の蛇身が融合してできた十字架の前で、邪神官ハーゴンはつぶやいた。聖堂に据えられたかがり火が微かに揺らめいている。合わせて揺れるハーゴンの影よりもっと暗い影が、後ろに三体控えていた。 アトラス、バズズ、ベリアル…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・190

精霊ルビスの名を胸で唱えると、どこからともなく声が聞こえた。 ――ロランよ。今あなたが見ているのは、ハーゴンが作ったまやかしです。惑わされてはなりません。さあ、心の目を開き、すべてを見るのです……! ロランの目の前が真っ白な光に覆われていく。潮…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・189

「おお、ここにおられましたか、ロラン王子!」 若き近衛兵長のシルクスがロランを見つけて足早にやってきた。見知った顔にほっとして、ロランはシルクスに問いかけた。「シルクス、僕はどうやってここに来たんだ?」 シルクスは端正な顔をきょとんとさせた…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・188

第5章 悪霊の神々【やすらぎの城】 ハーゴンの神殿を目指して、ロラン達は雪に覆われた大森林を西へ歩いた。 道すがら、ルナがロランとランドに話した。元はベラヌールで大神官の地位に上りつめたハーゴンが、いかに邪神官になり、邪教を広めていったかを。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・175

【献身】(ここまでか……。僕の力だけでは、もう……)「――させないっ!」 ロランの目の前が暗くなりかけた時、まだ少年らしさの残る声が鋭く響き渡った。 さかしまにアークデーモンの手にぶら下げられていたランドだ。腰に下げているはやぶさの剣は、顔の傍に…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・174

「危ない!」 ルナが叫んだ。またイオナズンが来るとロランも察し、素早くアークデーモンの肩を蹴って離れる。そこへ、ギガンテスが棍棒を振り上げて乱入してきた。構わずアークデーモンは呪文を唱える。大爆発がギガンテスも巻き込んで炸裂した。「――っ!」…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・173

緑色の肌の巨人ギガンテスが、巨木を削っただけの無骨な棍棒を振り下ろした。ロランは動きを見切って回り込み、足の腱を切った。動きが取れず膝を突いたところを、跳躍して巨大な単眼へ斬りつける。苦鳴を上げ、ギガンテスは棍棒を放り出して両手で傷を押さ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・172

ロランはランドと共にサイクロプスへ斬りかかった。サイクロプスは腰を落としたまま丸太のような腕を振るった。ランドは身かわしの服の効果も手伝って、軽やかにその腕を蹴って舞い上がると、ロトの剣をサイクロプスの単眼に突き立てた。サイクロプスが怒濤…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・171

【魔群侵攻】 地鳴りが聞こえたのは、未明のことだった。ロランははっとして目を覚ました。風が強い。吹雪になっている。「二人とも、起きろ!」 たき火はわずかな炎を炭化した枝に残していた。土を被せて完全に消し、ロランは素早く毛布を剥がして丸める。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・170

【雪の一夜】 ランドが笑ってくれたので、ロランは少し安心した。 ロトの剣は不用になったから譲るのではなかった。伝説の勇者の武器であり、ずっとロランの片腕となって敵を倒してきた剣である。ものいわぬ戦友が自分から離れるのは寂しかったが、ランドの…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・169

太陽はわずかに西へ向かっているが、まだ日は高い。雪は容赦なく陽光を針と化し、ロラン達の目を突く。ロランはロトの兜のまびさしを下げ、ランドは防風眼鏡(ゴーグル)を下ろし、ルナはフードをなるべく目深にかぶって照り返しを防ぎながら歩いた。 厳寒期…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・168

第4章 神々の庭【天と地の境で】 群青の空の下、ローブ姿の集団が雪原を歩いていた。先頭を行くのは、背が高く容貌も際立った若い男である。 雪原を渡る凍てついた風に、男の肩まで届く黒髪がなびいた。しかし白皙のおもてに揺らぎはなく、金色の瞳はひたす…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・152

「遅いッ!!!」 聖なる祠を守る壮年の賢者は、上品な顔を怒りに染め、勇者の子孫3人を怒鳴った。ロラン達は身を縮めて、素直に叱責に耐えるしかなかった。 ロトの鎧を入手したロラン達は、ロンダルキア登頂をいったん中断し、ランドのリレミトの呪文で洞…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・151

「よかった、無事で……」 たおやかな手で、ルナは鎧の肩当てをなでた。ランドが嬉々としてロランを見る。「ねえロラン、さっそく着けてみなよ!」「えっ、今か?」「そうだよ、せっかく見つけたんだしさ」「そうね、私も見たいわ。ロランが身に着けたところ」…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・150

オークキングの槍がロランの右肩をかすった。真空波が生じ、ロランの頬を切り裂く。辛うじて顔を逸らし、浅い傷で済んだ。もし逸らすのが遅れていたら、顎の骨まで切り裂かれていただろう。「はあっ!」 相手の攻撃が終わった直後を見計らい、ロランは跳躍し…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・149

声は、猪がうなる声に似ていた。がちゃがちゃと杯が鳴り合う音もする。 強い獣臭が鼻を突く。そこに酒精が漂い、肉を焦がした臭気も混ざり合って、胃がひっくり返そうになる。ロラン達はとっさに口と鼻を片手で覆っていた。死臭とはまた違ってひどい臭いだ。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・148

【巨猪の王】 長い階段をのぼって3階に上がると、洞内に詰まっていた死臭が薄くなった。 死肉や血液、臓腑、糞尿が混ざり合って腐りゆく臭い。それを初めて嗅いだのは、滅ぼされたムーンブルク城でのことだった。 吸うと鼻腔や肺に突き刺さり、腹に鉛のよう…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・147

「……さっき、そこから入ってきただろう? ほら、その右手の」「そうかしら? この戦いで、私達、結構動きまわってたわよ。位置がずれたかも……」「まさか……」 ロランは、もと来た方だと思われる出入り口を見た。まあまあ、とランドがなだめる。「あまり深く考…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・146

【鏡合わせの回廊】 1階に戻ると、そこからすぐ北側に上り階段を発見した。迷宮の多くは正しい順路が遠回りに造られているものだが、まず目に付いた階段から行くことにする。 上っている間、ロラン達は無言だった。 地下1階で出会った男の話が、ずっと頭の…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・145

「私のほかに、大勢の人がいました。魔物は雪の上に私達を下ろすと、ハーゴン様の神殿まで歩けと言いました。みんな薄着で、厳しい寒さの中を歩くなんてできないと泣きましたが、魔物は人が苦しむのを見るのが楽しみなのです……」「……ひどい」 ランドがぽつり…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・144

【命の紋章】 闇の中は濃い死臭に満ちていた。空気は淀んで冷たく、骨の芯から凍りつきそうな冷気が漂っている。ランドが灯明の魔法を使って、ルナのいかずちの杖の先に広範囲を照らす灯りをともしたが、闇はなお深く、先を見通すことはできない。 ロンダル…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・143

ロラン達は半日かけて深い森を抜けた。木々の隙間から見えていた青空は次第に曇り、盆地に広がる枯れた平原を薄暗く見せていた。 盆地の周囲は峻厳な岩山に囲まれている。ロラン達から北側にひときわ高くそびえる山々が、目指すロンダルキア台地だ。 3人は…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・142

結界を抜けると、薄暗い小部屋に青白い光の渦があった。これが、かつてハーゴンが開いたという旅の扉だ。「行くぞ……」 ロランは二人を振り返る。ランドとルナはうなずき返した。ロランは息を吸いこみ、旅の扉に足を踏み入れた。 軽く目が回るような感覚がし…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・141

【魔界の門】 ベラヌール監獄は、朝日に輝く湖を背に堅牢な姿を見せていた。ロラン達が門衛に近づくと、彼らは無言で道を空けた。町を治める法王ハミルトに言い含められているためだ。 ハミルトは、ロラン達がハーゴンに近づく手がかりを探すためにベラヌー…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・140

船は茫漠とした白い空間に浮かんでいた。(ここは……) ロランは甲板の上で、ぼんやりとあたりを見回した。濃密な乳色の靄(もや)が広がり、かすかな波の音でどこかの海上だと気づく。 朝日が世界に色彩をもたらす直前の、無のような白の時間帯だった。 ロラ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・139

第三章 ロンダルキア 【漂流】 ミチカの夜泣きが治まらないので、マリサはミチカを抱いて、集合住宅から表へ出た。避難民のために造られた仮のすまいは、壁一枚隔てた一部屋が連なる長屋である。天幕より安心できる空間だが、壁が薄いので子どもの泣き声は隣…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・42

「あれは!」 部屋の中央に、首のない人の上半身を模した人形があり、それに青く美しいマントが掛けられていた。ロラン達は我先にと駆け寄った。「これじゃないか?」「ええ、間違いないわ、風のマントはこれよ!」「うわあ、きれいだなぁ……本物の鳥の翼みた…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・41

「私、焦ってたみたい……。早くハーゴンのもとへ行って、お父さま達の仇(かたき)を討ちたい。気がついたらいつも、そのことばかり考えているから」「うん。わかるって言っちゃいけないけど、……わかるよ」 ランドらしい言い方に、ルナは癒されたように微笑ん…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・40

【風の塔】 百里が浜からさらに南下し、海につながる支流の橋を二つ越え、ロラン達は風の塔の立つ平原まで来ていた。 浜で釣った魚を食いつなぎ、平原に向かう途中の森林地帯で食べられる木の実を採取し、川でまた魚を釣った。時期が良かったので、ここでも…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・39

ムーンペタから北上して数日後、3人はムーンブルク東側にある百里が浜を歩いていた。砂浜が半島の半分以上続くので、百里が浜と呼ばれている。 日差しは強く、ルナは日焼けを嫌って頭巾を目元まで降ろしている。ロランは細かい砂を歩きながら、潮風を胸一杯…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・38

風の塔。そこに、いにしえ人(びと)が作った〈風のマント〉があるかもしれないと、ルナは言った。 風のマントは、身に着けて高い所から飛び降りると、風をはらんである程度の距離を滑空できるのだという。とても軽い素材で仕立てられている上、そうなるよう…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・37

第二章 勇者航路【いざ、南へ】 行けども行けども、森の中。密生した木々の中を、3人の少年達が足早に進んでいく。 森の中には、かろうじて、南に続く小道が残っていた。時たま、朽ちた倒木が行く手をさえぎっていると、青い服の少年が軽々とそれらをどかし…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・7

【遥かなる旅路へ】 ロランは困り果てていた。「王子っ……! じいは王子と離れるのがつろうございますぞ! 王子様をお育てして、はや16年。まだお小さくてあそばされたロラン様をこの腕に抱かせていただいたあの時から……なんと月日の早いことか……」 しきり…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・6

「だが、わしはもう60歳になる。さすがに剣を振るうには年を取り過ぎた……。せめて今のお前くらい若ければな」「……父上」 視線を落とした父を振り向き、ロランは言った。「もし、ロトの血が試される時が来たのなら、それは今なのではないですか?」「ロラン…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・5

【勇者ロトの末裔】 薄暗いその部屋には、いくつもの肖像画が飾られていた。初代から今日に至るまでの、歴代王家の者達である。その中でも最も大きな一枚の前に、ロランは父王と共に立っていた。 金の額縁に、立ち姿の青年が一人描かれていた。赤い角と房飾…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・4

「何?!」 普段は泰然としている王が、わずかに腰を浮かした。ロランも、玉座の肘掛けを両手で強く握りしめていた。大臣達もざわついたが、兵士が再び口を開くと、聞き逃すまいと口をつぐむ。「……まったくの奇襲でありました……ムーンブルク城は戦の態勢も整…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・3

第1章 勇者の末裔【破滅の足音】 世界の東に位置する広大な大陸の南に、交易船がいくつも停泊し、海鳥が飛び交う美しい港町がある。 鮮やかな色合いの屋根が軒を連ねる街並みの中央を、大通りがまっすぐ伸びていた。その先には国王が住まうローレシア城があ…