蒼雪庵

いまだに推敲中

王子再会、銀の鍵

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・22

「ラリホーアントに、鎧ムカデ?!」 ランドはたじろぎ、後じさった。なまじ知識があるだけに、その恐ろしさも知っているからだろう。薄紅色の巨大アリが数匹と、血の色の外殻を持った巨大ムカデが魔術師の周りを固める。半ば立ち上がったムカデの大きさは、…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・21

岩山の峡谷を抜けて一日半歩くと、広大な草原が広がった。遠くには山脈が青く見える。そのふもとに、目指す湖はあった。「広いなあ……」 ロランは、ほうっと息をついて眺めた。幼いころ一度訪れたが、その記憶と変わらず湖は広々としていた。午後のけだるい日…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・20

さかんに舌を鳴らし、キングコブラの一匹がロランに飛びかかった。ロランはその頭へ向かって銅の剣を振りかざした。その瞬間、ふっと全身が空白になる感覚があった。(いける!) 空白になった全身に、瞬時に満たされるのは、あふれんばかりの自信と力だ。ロ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・19

サマルトリア城下町で多めに保存食や道具類を買うと、ロランとランドはサマルトリア王にあいさつに行った。王はランドとの合流をとても喜び、これからの旅も頑張れと励ましてくれた。 ランドの妹アリシアは、ランドが部屋に来るなり、自分も連れていってほし…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・18

ランドの言うところによると、ロランを捜してローレシア王に会ったあと、歩いてサマルトリア城へ向かったという。だが道のりで疲れ果て、リリザで宿を取ったのだ。 勇者の泉の洞窟からキメラの翼を使ってローレシアに向かった分で、道具は尽きていた。キメラ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・17

「とは言ったものの……」 リリザへの街道を歩きながら、ロランはやるせない気持ちで暮れていく空を眺めた。「またローレシアまで、何日も歩くのか……」 歩くことはつらくはない。ロランを憂鬱にさせるのは、行って、また無駄足になることだ。(今日はリリザで…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・16

サマルトリア城下町に着くと、ロランはすぐ城へ向かった。 城内1階には大聖堂があり、ここは日中、町の人々に開放されていて、人の出入りが多かった。犯罪率の低さでも有名だったこの町にも、ついにスリの集団が出たと、リリザの町で噂になっていた。 対策…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・15

【友よ、ここに】 今すぐにランドを追いかけたい気持ちだったが、何日もろくに休まずの強行軍だったので、さすがにロランも父の申し出を断れなかった。ランドもサマルトリアに帰ったのなら、向こうで自分を待っていてくれるに違いない。 父やマルモア達も話…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・14

急ぎ足で洞窟を出ると、ロランは空を見上げ、苦い顔をした。今の気持ちを代弁するように、木々の隙間から覗く空は曇っている。「やっぱり、使うしかないのか……」 背中の荷物を降ろし、道具袋からキメラの翼を取り出したロランは、重くため息をついた。金色の…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・13

【さまよう王子、二人】 ローレシア大陸の北東に、細長く延びた半島がある。切り立った断崖の際まで木々が生い茂り、訪れるのは海鳥ばかり。冬になれば風が吹き荒れ、人が住まうことのない寂しい土地である。 だが、サマルトリアの国境とその半島とは、橋が…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・12

アリシアはああ言っていたが、ランドはそこまで愚かではないし、弱い人間でもない。もちろんそれは、家族であるアリシアやサマルトリア王がよく知っていることだ。 ただ城の人間は、ここ一番でランドを信用しきれていない風はあった。本当に彼に任せていいの…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・11

「ロラン? お兄ちゃんがよくお話ししてた人?」「そうでございますよ、あのロラン王子様でございます。姫様、どうぞごあいさつを」 かしこまって女官がアリシアの後ろに控える。先にロランが膝を突き、アリシアの目を見つめた。「初めまして……じゃないかな…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・10

【のんき者の王子】 深い森の小道を、少年が一人、東へ向かって歩いていた。 春が進んで、日を追うごとに濃くなっていく木々の緑にも劣らぬ緑色の前掛けに似た長衣をまとい、ふくらはぎに届く長い橙色のマントをひらひらさせながら。 風よけの眼鏡を付けた皮…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・9

「さっき、店から男の子が出てきたんだけど……」 ふと、あの子どものことが思い出されて、ロランが何げなく口にすると、小隊長は「ああ」とうなずいた。「その子どもは、店主のかみさんが、ムーンブルクの兵士から預かったそうです。親戚同士だそうで」「いつ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・8

【南で燃えた赤い空】「ほうい、あんた。見えてきたぞう」 おおらかな中年の男の声に、うたたねをしていたロランは、はっとしてまばたきを繰り返した。心地よく揺れる馬車の荷台の中、木箱によりかかっていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。 体を起こ…