蒼雪庵

いまだに推敲中

2015-12-12から1日間の記事一覧

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・80

【世界樹】 船は東を目指して進んでいた。ロランは舵取りをカイルに任せ、舳先に立って水平線を見つめていた。 ランドのいない船は静かだった。その場にいるだけで、ランドには場を和ませ、明るくする何かを持っていた。 寂しい。ロランの胸を満たすのは、冷…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・79

「……ロラン」 装備を解き、ベッドに横たえると、ランドがうっすらと目を開けた。ロランは冷えきったランドの額に手を当てて、うなずいてみせる。「ここにいる。さっき、ルナ達が医者を呼びに行ったから。大丈夫だ」「そう……」 血の気のない唇から、あえかな…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・78

「それで、さっそくだけど何かつかめたの?」 ルナが尋ねる。カイルはうなずいた。「はい、わずかですがお役に立てるものもあるかと。一度お城に戻って陛下にご報告を考えておりました矢先、こうして王子様達に出会えたので、幸運でした」 カイルが話したの…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・77

【邪神官の魔手】 夜の航海は静かだ。波も穏やかで、船を揺りかごのようにゆったりと揺らしている。 ロランは薄闇の中、隣のベッドで眠る友を見ていた。背を向けていて、ランドの寝顔はわからない。 このままでいいのか、という気持ちがあった。おそらく体に…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・75

小さな村には宿屋ではなく、一軒だけ民宿があった。だが長く旅人が訪れないので、宿の主人は裏の畑で大根を抜いていた。「すみません。一晩泊めていただきたいのですが……」 ロランが声をかけると、主人は折り曲げていた腰を伸ばして驚いた顔をした。「おお、…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・74

いきさつはともかく、食事当番の交代制は良い気分転換になった。最初はロランの番だった。海育ちのせいか、味つけは塩が中心だが、スープも焼き物も、素材の味を引き出していると二人に評判が良かった。刃物の扱いも慣れているので、切り方も鮮やかである。 …

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・73

ロラン達は長旅ですすけた顔で、山間に浮かぶ小さな村の入り口に立っていた。畑作と牧畜で自給自足している寒村に見えるが、ここに羽衣作りの職人が住まうという。 ここまでの道のりの遠さがどっと押し寄せ、安堵に崩れそうな膝を励ましながら、まず宿屋を探…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・72

【最後の巨匠】「そら、これでどうだい?」「うむう……」 パチリと指された将棋の駒に、小柄な老人がしわ深い顔をぎゅっとゆがめる。顎に指をかけ、前のめりに盤をにらみ、白い口髭をもぐもぐ言わせてうなる姿に、小太りの中年男は「ふう」と吐息を漏らした。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・71

壁が崩れて外がむき出しになった回廊を、老爺は影のように歩いた。風がまともに吹きつけ、ロラン達は風圧にあおられて通路から足を踏み外さないよう歩くのがやっとだったのに、老爺は足取り乱さず先を行って、次の階段で待ちかまえている。 まともな人間でな…