蒼雪庵

いまだに推敲中

2015-12-10から1日間の記事一覧

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・55

港の船はどれも帆船だが、風のない港湾でも自走していた。船尾に魔法力を注いで動く機関が付いており、螺旋状の推進器を動かして進む。 帆を畳んでいても、ゆるい速度ながら自由に走れるので、人が漕がなくても小回りが利き、岸壁に接岸できるのが利点だ。 …

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・54

【沈んだ財宝はいずこ】 ロラン達も同席していることにマーフィーは少しためらったが、テーブルでエレーネに温かいお茶をもらって落ち着くと、少しずつ話し始めた。「ペルポイへ向かう途中、急に嵐が来たんです。ここから北の沖でした。船は横波に転覆して沈…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・53

「エレーネはこの秋に結婚を控えておりましてな。魔物が町に入り込むなど滅多になかったので、本当に今回のことは奇跡でした。皆さんが通りがかってくれなかったら、今頃は……」「ええ……」 エレーネもうなずく。あらためて感謝をこめ、頭を下げた。「本当に助…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・52

心に何とも言えないひっかき傷を残され、3人がとぼとぼと帰り道を探していると、娘の悲鳴が聞こえてきた。ぼんやりしていた気持ちが、一気に戦闘のそれに切り替わる。「――やめてください! 私、おじいちゃんの所に帰らなきゃ……放してっ!」 とまどう声に、…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・51

「おっと」「あっ、ごめんなさい」 はしゃぎすぎて気づくのが遅れ、ルナは誰かと肩がぶつかった。軽く頭を下げかけたが、相手はルナを見てにんまりする。筋肉ではちきれそうな青い横縞の半袖シャツに革のズボン。どうやら船の乗組員のようだ。ひどく酔ってい…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・50

【機港都市ルプガナ】 ドラゴンの角北の塔からいったん北上し、東へ。ロラン達はついにルプガナの町へ到着した。「ここがルプガナか……。こんなに大きな町だったのか」「ねえねえ、見たことのない設備があるよ!」 町の入り口にたどり着いた時は日も西に傾い…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・49

なるべく荷物は軽くしようと、ルプガナに行くまでの食料や備品を吟味した。ルナも、愛用していた鍋をここに置いていくことに決めた。「大事に使ってちょうだいね」 泣く泣く、鍋やおたまを塔のすみに置く。数羽の海鳥が、珍しそうに見ていた。いずれ水飲み場…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・48

次々に襲ってくる魔物を蹴散らして7階まで来ると、吹き抜けの回廊は終わった。周囲を胸の高さまでの壁が覆っていて、展望台のようになっていた。眺めは素晴らしく、地平線と空の境目まで見渡せる。人が往来していたころは、観光でここにのぼる旅人も多くい…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・47

【風と勇気とマントと】 大砂漠のオアシスから北上したロラン達は、緩やかに弧を描く半島の先までたどり着いていた。西に青く霞むのは、目指すアレフガルド大陸だ。「これがドラゴンの角か……」 ロランは目の前に立つ高い塔を見上げた。青空に、蔦を所々から…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・46

遠く離れた所でせっせと洗濯板に泡を立てながら、ルナはロランとランドがはしゃぐ姿を見ていた。 あんなに笑っている二人を見るのは、小さいころ以来だ。お互いにふざけ合って、片方が背中から組み付いて水に押し倒せば、片方が腰に突進して抱きつき、水中に…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・45

砂漠に入ると、一気に気温が上昇した。靴の裏からも熱気が伝わってくる。土や草がないだけで、こうも変わるのかと思った。 「この砂の上に鍋をおいてみたいなぁ。卵が焼けるかもしれないよ」 顔を真っ赤に火照らせてランドがのんきなことを言うと、ルナが軽…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・44

「黙っててごめんなさいね。確証がなかったから、あえて言わなかったの。期待して来て、だめだったらがっかりしちゃうでしょ?」「それはいいけど、旅の扉が使えると良かったのか?」 ロランが言うと、ルナは少し肩をすくめた。「ええ。ドラゴンの角に行かな…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・43

【西の大砂漠紀行】 夜明けの清浄な光さえ拒むムーンブルク城下町の前に、ロランとランド、ルナが立っていた。瘴気が立ちこめている場所とそうではない所は、まるで線引きでもされたかのように見た目でもはっきりしている。ロラン達は、その境目にいた。 か…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・42

「あれは!」 部屋の中央に、首のない人の上半身を模した人形があり、それに青く美しいマントが掛けられていた。ロラン達は我先にと駆け寄った。「これじゃないか?」「ええ、間違いないわ、風のマントはこれよ!」「うわあ、きれいだなぁ……本物の鳥の翼みた…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・41

「私、焦ってたみたい……。早くハーゴンのもとへ行って、お父さま達の仇(かたき)を討ちたい。気がついたらいつも、そのことばかり考えているから」「うん。わかるって言っちゃいけないけど、……わかるよ」 ランドらしい言い方に、ルナは癒されたように微笑ん…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・40

【風の塔】 百里が浜からさらに南下し、海につながる支流の橋を二つ越え、ロラン達は風の塔の立つ平原まで来ていた。 浜で釣った魚を食いつなぎ、平原に向かう途中の森林地帯で食べられる木の実を採取し、川でまた魚を釣った。時期が良かったので、ここでも…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・39

ムーンペタから北上して数日後、3人はムーンブルク東側にある百里が浜を歩いていた。砂浜が半島の半分以上続くので、百里が浜と呼ばれている。 日差しは強く、ルナは日焼けを嫌って頭巾を目元まで降ろしている。ロランは細かい砂を歩きながら、潮風を胸一杯…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・38

風の塔。そこに、いにしえ人(びと)が作った〈風のマント〉があるかもしれないと、ルナは言った。 風のマントは、身に着けて高い所から飛び降りると、風をはらんである程度の距離を滑空できるのだという。とても軽い素材で仕立てられている上、そうなるよう…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・37

第二章 勇者航路【いざ、南へ】 行けども行けども、森の中。密生した木々の中を、3人の少年達が足早に進んでいく。 森の中には、かろうじて、南に続く小道が残っていた。時たま、朽ちた倒木が行く手をさえぎっていると、青い服の少年が軽々とそれらをどかし…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・36

「うそ……だろ……」 かすれた声で、ランドがつぶやいた。「不死者(アンデッド)? キースって人、最初から死んでたの?」「……ああ。僕は、彼に触れた時に、そうじゃないかと思ってた」「――なんで教えてくれなかったんだよ?!」 振り向き、ランドが怒鳴った。…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・35

【決意】 フィリアの宿にルナを連れて行くと、フィリアはもちろんルナの顔を覚えていて、涙を流して無事を喜んだ。 心づくしのもてなしに、ロランとランドの疲れも癒されたが、ルナの表情は硬いままだった。 翌朝すぐに、ルナはムーンブルク城へ行きたいと二…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・34

ルナは、ムーンペタの教会付近に二人を連れてきた。そこには天幕がいくつか張られていて、数十人の人々が生活しているようだった。 ロランとランドはすぐにわかった。ムーンブルク城下町から逃げてきた難民の仮住まいだということに。 教会から数人の尼僧が…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・33

ひとまず塔の位置を地図に記すと、二人は丘を下りて池へ向かった。気候が良いせいか、魔物はさほど襲ってはこず、森を分け入って先へ進む。 ムーンブルクはローレシアより南にあるせいで、植物も豊かだ。だが、みっしりと生えた木々が徐々に減り、枯れ木が目…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・32

【ラーの鏡】「まだ怒ってるのか」「……別に。ロランって、意外と冷たいんだなって思ってただけさ」 騎士の教えてくれた土地まで、残った食料でも行けると踏んで、ロランとランドはムーンブルクの廃墟を出たのち、すぐに東へ向かうことにした。 体は疲れてい…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・31

ロト王族同士で、避難路のありかは伝えられていた。 ムーンブルク城中央にある庭園は、一度城の外に出て壁沿いに下り、城南西壁にある別口から入らないと行けない。薬草も残り少なく、次々と襲いかかってくる魔物に手を焼きながら、二人は苦労して庭園に入っ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・30

それからも無数の遺骸を目にしながら、無言のうちに二人は城へと着いた。美しかった外壁は血と泥にまみれ、煤(すす)で黒く穢されていた。見上げるのもわずかの間。二人は入り口をくぐった。(頭が痛い……瘴気のせいなのか) 歩くごとに、頭痛が響く。体が倦…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・29

【光はなく、死のみ】「あの小犬、ちょっとかわいそうだったね」 ムーンブルク城へ至る平原を西に歩きながら、ランドがつぶやいた。「ああ……。でも、この辺りの魔物はローレシア大陸よりも手強い。とても連れては行けないよ」「うん……」 ロランも、ムーンペ…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・28

そろそろ昼になりそうだったので、二人は福引所へ向かうことにした。池を離れて賢者の庵に通じる小屋へ回り込むと、野良らしい白い小犬が、二人を見つけて駆け寄ってきた。「あ、犬だ。かわいいなあ」 尻尾を振り、さかんに吠えたてる小犬を見て、ロランがに…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・27

翌朝、フィリアに弁当を持たせてもらい、ロランとランドは宿屋を出た。すぐに城へ向かいたかったが、まず装備を調えるため、武器と防具の店を訪ねる。まだ準備中のところを頼みこみ、店を開けてもらった。「お客さん、これはいいよ。鉄の槍に鋼鉄(はがね)…

自作ドラゴンクエストⅡ~悪霊の神々・26

【人と人とが出逢う町】 サマルトリア城から南に下ると、ムーンブルク半島を望む海峡がある。その突端を結ぶ位置に、白い石でできた門を持つ美しい関所があった。 ムーンブルク半島を結ぶ海底道、〈ローラの門〉である。 かつてロトの子孫の勇者――ローレシア…